音楽の基礎

「音楽の基礎」 芥川也寸志 著(岩波新書 初版1971年)

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私が中学、高校の頃、自分で吹奏楽部のために曲をアレンジしたり、作曲のまねごとをしたりしていたとき一通り、楽典やスコアリーディングの勉強をした。そのとき読んだ本で印象深かった本の一つがこれ。
今、吹奏楽部で頑張っている娘に読んでもらえたらと思い、書棚から引っ張り出したが、その前に改めて読み直してみました。目次だけあげてみます。
Ⅰ音楽の素材
 1静寂/2音
Ⅱ音楽の原則
 1記譜法/2音名/3音階/4調性
Ⅲ音楽の形成
 1リズム/2旋律/3速度と表情
Ⅳ音楽の構成
 1音程/2和声/3対位法/4形式
なんだか目次だけ見ると普通の音楽理論書のようだが、ところどころはっとする言葉や新鮮なものの見方に気付かされます。抜き出して伝わるか分かりませんが、いくつか心にとまった箇所をあげてみます。

--このような真の静寂は、日常の中には存在しないまったく特殊な環境ではあるが、この事実は音楽における無音の意味、あるいは、しだいに弱まりつつ休止へと向かう音の、積極的な意味を暗示している。休止はある場合、最強音にも勝る強烈な効果を発揮する。

--ドビッシーの全音音階は、後期ロマン派にいたるドイツ音楽の、基本的な構成要素である長・短三度の和声体系をつきくずしたという点で、この意味はきわめて大きく、新しい音楽世界の出発でもあり、現代音楽の時間的枠づけとして、一番大きく考えた場合はドビッシーから現代音楽が始まると考えるのは、この意味からいって妥当であると思う。

--しかし、私はあえてもう一度繰り返したい。リズムは生命に対応するものであり、リズムは音楽を生み、リズムを喪失した音楽は死ぬ。リズムは音楽の基礎であるばかりでなく、音楽の生命であり、音楽を超えた存在である。

--作り手→弾き手→聞き手→作り手という循環のなかにこそ音楽の営みがあるということは、遠い昔もいまも変りがない。積極的に聞くという行為、そして聞かないという行為は、つねに創造の世界へつながっている。
 この創造的な営みこそ、あらゆる意味で音楽の基礎である。


やっぱりこの本は名著です。これを読んで芥川也寸志の作品「交響三章」「オスティナータ・シンフォニカ」など聞くとまた違った聞こえ方があるかもしれません。