Travesía―曲解説(4)

「Travesía」の4曲目「Agradecimiento」について。秋山のオリジナル曲です。日本語で「感謝」。この曲は明確なスタイルではありませんがフォルクローレではCanciónと呼ばれる叙情的な曲です。2011年12月25日旅先の冬山の夕暮れ時に一人宿の薄暗い部屋の中、ギターを弾いていました。ふとこの一年ばかりの間にBalladsやmuraban!!!などのバンド仲間や、我々に演奏の機会を与えてくれるお店の方々など素敵な仲間のつながりがどんどん広がった一年だったなあ…と思い至り、そしてポロンポロンとギターを弾いていたら、曲になっていきました。そばに居る人への感謝の気持ちを曲に表しました。思えばこうしてつながりの中で音楽を続けることができるのは、あちこちのつながりの結び目を作ってくれた廣木光一師匠のおかげでもあります。「Travesía」の録音では兄弟子の島田栄一氏の尽力があってこそ実
現しました。感謝です。更に遡れば廣木光一氏に師事するよう奨めてくれた津上研太先輩のおかげですね。こんないい加減な私を支えてくれている家族にも感謝。山中の夕暮れはこんな風に知らず知らずセンチメンタルな気分にさせます。曲を整えながら頭の中ではすでに尚美の声が広がっていました。尚美にヴォイスをお願いするにあたって、「ありがとう」と言わずに、その気持ちを伝えるような曲にしたい、とだけいいました。結構、歌うのは難しいんじゃないかと思います、隙間だらけで、しかも音程の跳躍があって。朴訥としたまっすぐな尚美の声はメロディーにすぐ馴染みます。無駄のない言葉がストレートに感情を表現します。間奏の大竹のソロ、しっかりした音程の無駄を削ぎ落したシンプルなラインと暖かな音色が曲に奥行きを持たせます。アンサンブルだ。
「Agradecimiento」、ジャズライヴではCanciónではなくジャズワルツでも演奏します。またあるときはヴァイオリンとギターでも演奏します。いろんな編成でそれぞれの表現を楽しめる曲になったと思っています。そして皆に、¡Agradecimientos!